片足だけの外反母趾はなぜ?考えられる4つの原因と自分でできる改善ケア
「靴を履くと、なぜか右足の親指の付け根だけが痛い」「鏡で見ると、左足だけ親指が『くの字』に曲がっている気がする」。このように、片足だけに現れる外反母趾の症状に、疑問や不安を感じていませんか?
外反母趾はハイヒールなどが原因で両足に起こるイメージが強いため、「なぜ片足だけ?」と不思議に思うのは当然です。実は、片足だけに症状が強く出る場合、その原因は靴だけでなく、あなたの姿勢や歩行のバランスの崩れや、無意識の生活習慣に隠されていることが多いのです。
この記事では、片足だけに外反母趾が起こる特有の原因を深掘りし、自分でできる改善・予防策、そして病院を受診すべき目安について詳しく解説します。
この記事の目次
あなたはどっち?片足だけの外反母趾セルフチェック
まず、ご自身の足の状態を客観的に確認してみましょう。
- 見た目のチェック:素足を揃えてまっすぐ立った時、左右の足で親指の曲がり具合(小指側への傾き)に差がありますか?親指の付け根の出っ張りが、片足だけ顕著ですか?
- 痛みのチェック:靴を履いた時、片方の足の親指の付け根だけが赤くなったり、痛みを感じたりしますか?
- 重心のチェック:目を閉じてその場で軽く足踏みをしてみてください。自然に止まった時、どちらかの足に体重が多くかかっている感覚はありますか?
片足だけに症状が見られたり、左右で重心の乗り方に差を感じたりした場合、姿勢や歩行のバランスが崩れているサインかもしれません。
【関連記事】外反母趾かな?と思ったときの見分け方!セルフチェック方法を解説|コラム「足のちえぶくろ」|ケアソク(CARE:SOKU)|株式会社山忠
なぜ片足だけ?外反母趾が左右非対称に起こる4つの原因
同じ靴を履いて生活しているにもかかわらず、なぜ片方の足だけに症状が現れるのでしょうか。そこには、足元だけでなく、身体全体のバランスが関係しています。
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原因 |
メカニズム |
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身体の歪み |
骨盤の歪みなどにより、片方の足に余計に加重しやすく負担が集中する。 |
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利き足への負担 |
軸足となる「利き足」で踏ん張る癖があり、長年の蓄積で変形が進む。 |
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過去の怪我 |
古い捻挫などで足首の関節が不安定になり、バランスを崩して親指に負担がかかる。 |
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病気の可能性 |
関節リウマチなどが片側の関節から発症し、指の変形を引き起こすことがある。 |
身体の重心の偏りや骨盤の歪み
私たちの身体は、完全な左右対称ではありません。足を組む癖、いつも同じ側でカバンを持つ、片足に体重をかけて立つといった日常の無意識な癖が、骨盤の歪みや身体全体の重心の偏りを生み出します。
身体が歪むと、立っている時や歩いている時に、どちらか一方の足に常に多くの体重がかかるようになります。この過剰な負荷が長年にわたって蓄積することで、負担の大きい側の足のアーチが崩れ(開張足)、外反母趾が発症・進行しやすくなるのです。
「利き足」への過度な負担
スポーツの経験がある方や、特定の動作を繰り返す職業の方などで、無意識のうちに軸足で強く踏ん張る癖がついていることがあります。この「踏ん張り」(特に親指だけで踏ん張る傾向や内側荷重での動作)が、親指の付け根に継続的な圧力を加え、外反母趾を悪化させる要因となります。ただし、片足だけの外反母趾の場合は、後脛骨筋腱機能不全症などの医学的原因が疑われます。なお、スポーツ選手では、利き足よりもむしろ軸足(踏ん張り足)に外反母趾が多く見られる傾向があります。
過去の怪我(捻挫など)の影響
過去に足首の捻挫や骨折をした経験はありませんか?一度傷めた足首の靭帯は、完治しても緩みが残ることがあり、足関節が不安定な状態(足関節不安定症)になることがあります。足首が不安定だと、歩行時に足元がグラつき、それを補うために無意識に親指側に力を入れてしまいます。この代償動作が、結果として親指の付け根に過剰なストレスをかけ、外反母趾を引き起こすのです。
関節リウマチなどの病気の可能性
頻度は高くありませんが、関節リウマチなどの自己免疫疾患が原因で、指の変形が起こることもあります。関節リウマチは、複数の関節に対称的に起こることが多いですが、初期段階では片側の手や足の指から症状が現れることもあります。親指の付け根の痛みや腫れが急に出てきた、朝方に指がこわばる、といった症状がある場合は、一度専門医に相談することをお勧めします。
【関連記事】外反母趾はなぜなるの?原因と自分でできる対策を分かりやすく解説|コラム「足のちえぶくろ」|ケアソク(CARE:SOKU)|株式会社山忠
放置は危険!片足だけの外反母趾がもたらすリスク
片足だけの外反母趾は、単なる足の変形に留まらず、全身のバランスをさらに崩す悪循環の始まりかもしれません。
身体の歪みのさらなる悪化
痛みのある足をかばって歩くことで、身体の重心はさらに偏り、骨盤や背骨の歪みを助長します。足元から始まった小さな歪みが、気づかぬうちに全身へと波及してしまうのです。
膝痛や腰痛、肩こりの誘発
変形した足では足のアーチが崩れ、歩行時の衝撃吸収がうまくできず、結果として不自然な歩き方になることで間接的に膝や腰に負担をかけ、痛みにつながる可能性があります。
自分でできる!片足外反母趾のセルフケア
外反母趾のセルフケアは、足指の形を矯正するというよりは、ストレッチやマッサージで筋肉の緊張を和らげることでリラックスや症状の進行を緩やかにする目的で行います。特に痛みが強い場合は無理せず、気持ち良い範囲で行いましょう。
足指のストレッチ(グーパー運動)
硬くなった足指の関節を動かし、筋肉を柔軟にする運動です。
- 椅子に座るか、お風呂の中などリラックスした状態で行います。
- 足の指を、思い切り「グー」の形に5秒間強く握りしめます。
- 次に、指と指の間を大きく広げるように「パー」の形に5秒間開きます。毎日気がついたときに行うようにします。
※関節の痛みや変形が強い場合は、症状を助長する可能性もあるため、無理に行わないようにしましょう。
痛みを緩和するマッサージ
親指の付け根周りの、凝り固まった筋肉をほぐします。
- 足の裏側から、親指と人差し指の間の骨(第一中足骨と第二中足骨の間)を、手の指で優しく揉みほぐします。
- 痛む親指の付け根の関節を、ゆっくりと円を描くようにマッサージしましょう。
テーピングやサポーターの活用
ドラッグストアなどで市販されている外反母趾用のテーピングやサポーターを使用するのも有効です。これらは、曲がってしまった親指を正しい位置に矯正し、歩行時の痛みを軽減する効果があります。
症状を悪化させないための生活習慣の見直し
外反母趾の進行を食い止めるには、足に負担をかける生活習慣を見直すことが最も重要です。
正しい靴選びの3つのポイント
靴は、症状を悪化させる最大の要因にも、足を保護する最良の味方にもなります。
- つま先の形:指先が圧迫されない、幅にゆとりのある「スクエアトウ」や「オブリークトウ」を選びましょう。
- かかとの固定:かかと部分がやわらかすぎずしっかりとホールドしてくれる靴を選び、足が靴の中で前に滑らないようにします。
- 靴紐やベルト:甲の部分を靴紐やベルトでしっかりと調整できる靴を選び、毎回きちんと締める習慣をつけましょう。
靴のサイズ:大きすぎる靴を選ぶと足のアーチが崩れたり、靴のなかで足が前滑りして指の負担が増すため、足長・足幅に合った靴を選びましょう。
つま先の形には大きく3タイプあります。
【関連記事】つま先の痛みを今すぐ解決!靴選びのポイントとリスク回避法|コラム「足のちえぶくろ」|ケアソク(CARE:SOKU)|株式会社山忠
歩き方を見直す
歩く際は、かかとから着地し、足指でしっかり蹴り出すことです。これが足裏の筋肉を鍛えることにつながります。
正しい歩き方をしていると、 かかと→足の外側→親指の付け根 の順に重心が移動していきます(あおり運動)。
重心の移動を確認するために、靴底をチェックしてみましょう。
かかとの外側と親指の付け根が削れていると正しい重心移動ができている目安になります。

インソールの活用
自分の足に合ったインソール(中敷き)を使用することで、崩れた足底のアーチをサポートし、重心の偏りを補正する効果が期待できます。専門家に相談し、足に合ったインソールを選びましょう。
【関連記事】失敗しないインソールの選び方!目的や種類にあわせて選ぶコツ|コラム「足のちえぶくろ」|ケアソク(CARE:SOKU)|株式会社山忠
靴下選びも外反母趾の予防に重要
快適な歩行のために、アーチサポート機能付きの靴下も上手に活用しましょう。足指を圧迫する窮屈な靴下は足指に負担がかかるため、適切な靴下選びが重要です。5本指靴下や足アーチサポート機能付きの靴下なら、歩行時に足指をしっかり使えてバランスを保ちやすくなります。
【関連記事】商品情報「ととのえる」|ケアソク(CARE:SOKU)|株式会社山忠
こんな症状は要注意!病院を受診すべき目安
セルフケアで改善が見られない場合や、以下のような症状がある場合は、我慢せずに整形外科を受診しましょう。
- 何もしなくてもズキズキと痛む
- 親指の付け根が赤く腫れて、熱を持っている
- 変形が進み、合う靴がほとんどない
- 足の痛みで、歩くのが困難になっている
まとめ:片足のサインを見逃さず、身体全体を見直そう
片足だけに現れる外反母趾は、「こちら側の足に負担が集中していますよ」という身体からの重要なサインです。その背景には、身体全体の歪みや生活習慣が隠されています。
足元の痛みや変形だけに目を向けるのではなく、なぜ片足だけに負担がかかっているのか、その根本原因を探ることが、症状の改善と再発防止の鍵となります。この記事を参考に、ご自身の身体のバランスや生活習慣を見直すきっかけにしてください。
〈ケアソク〉は、外反母趾の原因の一つである足の横アーチの崩れをサポートする機能を持つフットヘルスウェアです。足の専門家と共同開発し、科学的なエビデンスのある “新しい概念の靴下” をぜひお試しください。
●ケアソク〈ととのえる〉の研究開発者インタビュー
「研究を、世の中のために」共同開発者がケアソクに込めた想い
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記事監修
北澤 友子(きたざわ ともこ)
理学療法士
保健学修士
シックネイルケアセラピスト
新潟医療福祉大学大学院修了後、同大学の非常勤講師を担当しながら、リハビリの臨床現場をメインに活躍中。足・靴下・歩行に関する研究を学会にて多数発表。介護予防・健康増進など自治体の健康事業にも携わる。
【学術論文、研究発表】
前足部内外面に滑り止めを有した靴下が歩行時のクリアランスに及ぼす影響,"北澤 友子(新潟医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科), 阿部 薫, 伊藤 菜記",靴の医学(0915-5015)31巻1号 Page83(2017.08),会議録
転倒防止と屋内移動効率の向上を目指した滑り止め構造を有する靴下の開発,"北澤 友子(らぽーる新潟ゆきよしクリニック), 阿部 薫, 笹本 嘉朝, 後藤 可奈子, 中林 功一, 中林 知宏, 亀山 貴司",The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(1881-3526)JARM2016 Page I397(2016.06),会議録
ほか
著者: 株式会社 山忠


