マラソン後の疲労回復法とストレッチを足の専門家が解説
「マラソン後の体に溜まった疲労感を解消するには、どうすればいい?」「ジョギングなどの運動は必要?」
フルマラソンのような長距離を走った翌日に、身体が動けないほど痛くなった経験はありませんか。マラソンは長距離を走り抜く運動なので、普段のランニングとは比べ物にならないほどの疲労感が体全体に広がります。そのため、マラソン後の適切なリカバリーは大切です。
今回は、マラソン後の疲労回復法と足の健康を保つためのコツを、足の専門家が詳しく解説します。ストレッチ法も紹介しているため、ぜひご覧ください。
マラソン後の疲労回復は必要?期間は?
マラソン後の疲労回復はどうすればいいのかを知るためにも、そもそもマラソン後の疲労の状態と回復期間について、詳しく見ていきましょう。
疲労とは
「疲労」は一般的には疲れが蓄積した状態を意味しますが、実際には短期疲労と長期疲労の2つに分けることができます。激しい運動の後などに一時的に発生するのが「短期疲労」、長期間にわたる疲れが蓄積したものが「長期疲労」です。
マラソンの後の疲労は、一般的に短期疲労に分類されます。短期疲労は時間が経つにつれて自然と軽減されていきますが、回復する前に運動を再開すると、疲労が積み重なって長期疲労につながることがあります。長期疲労が続いてしまうと、予想外の身体の不調につながることもあるため、注意が必要です。
しかし、継続的に運動している人にとっては、マラソン後も早く運動を再開したいと思うでしょう。その場合には、いつも通りのペースで運動し始めるのではなく、身体の状態をよく観察しながら、徐々に運動を再開していきましょう。
回復期間は
マラソン後の回復期間は、マラソン経験や体力よって個人差がありますが、特に初心者ランナーは思った以上に疲労が溜まっていると感じる人もいるでしょう。休息は充分に取りましょう。
マラソン後におすすめの疲労回復法
では、マラソン後にはどのように疲労回復をすればいいのでしょうか。ここでは、マラソン後におすすめの疲労回復法を、以下の4つ紹介します。
- 軽いジョギングをする
- タンパク質を積極的に摂る
- 前後で糖質とアミノ酸を摂る
- 湯船に浸かる
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
軽いジョギングやウォーキングをする
マラソン後におすすめの疲労回復法の1つ目は、軽いジョギングやウォーキングをすることです。不要な老廃物や疲労物質が体内に滞留すると、血流が悪くなって疲れやすく、また疲労も回復しにくくなってしまいます。マラソン後の余力に応じて軽めに体を動かしましょう。
具体的には、1kmを7分~8分のペースで走ることを目指しましょう。ゆっくりと走ることで体に適度な刺激を与え、蓄積した疲労が効果的に解消されやすくなりますよ。
タンパク質を積極的に摂る
マラソン後におすすめの疲労回復法の2つ目は、タンパク質を積極的に摂ることです。タンパク質は、身体を作る重要な栄養素で、特に筋肉の80%はタンパク質から成ると言われます。運動後にタンパク質を摂取することは、筋肉の回復を促進し、次のトレーニングに向けて身体を整えるのに役立ちます。
タンパク質は体内で生成可能な非必須アミノ酸と、生成できない必須アミノ酸で構成されています。ランニング後の疲労回復には、特に必須アミノ酸の摂取が不可欠です。必須アミノ酸は体内で作ることができないため、食事から摂ることを心がけましょう。
マグロやカツオ、サンマ、鶏の胸肉やもも肉、豚肉、牛肉といった必須アミノ酸が豊富に含まれた食材を積極的に食べることをおすすめします。
また、タンパク質は、植物性の食品からも摂取可能です。大豆、レンズ豆、チアシードなども良いタンパク源となります。
食事で摂取するのが基本ですが、忙しくてなかなかバランスの良い食事ができない場合は、プロテインパウダーやプロテインバーなどのサプリメントを利用するのもひとつです。
前後で糖質とアミノ酸を摂る
マラソン後におすすめの疲労回復法の3つ目は、前後で糖質とアミノ酸を摂ることです。運動前後の栄養補給はパフォーマンスと回復に重要で、特に糖質とアミノ酸の摂取はエネルギー供給と筋肉回復に役立ちます。
糖質は体に必要な栄養源であり、マラソンなどの激しい運動では特に必要とされています。
また、糖質にはランニング中に筋肉内のタンパク質が分解されるのを防ぐ効果もあります。
走っている途中で糖質が足りなくなると、エネルギー源として筋肉内のタンパク質が分解されます。するとランニング後の筋肉の回復が遅くなり、疲労感が長引いてしまう可能性があります。
疲労感を早く回復させるためにも、走る前と走った後に糖質を摂取することをおすすめします。ランニング後は体内の糖質が消費されている状態です。消費した糖質を適切に補充することで、筋肉の中のタンパク質が分解されるのを防げます。
湯船に浸かる
マラソン後におすすめの疲労回復法の4つ目は、湯船に浸かることです。40度前後の熱すぎないお湯に、ゆっくりと浸かりましょう。時間は、15分から20分程度が目安です。
あたたかいお湯に浸かることで、血行促進の効果が見込めます。血行がよくなると酸素と栄養素が筋肉に運ばれやすくなり、疲労物質も体外に排出しやすくなりますよ。
また、温かいお湯に浸かると筋肉がほぐされ緊張や凝りが和らぐため、リラックスにも効果的です。激しい運動で起こった緊張や痛みが緩和され、回復を早める効果が期待できますよ。
一方、熱すぎるお湯に長時間浸かると、体の負担になるため適度な温度と適度な時間での入浴を心掛けてください。
また、湯船に浸かるときには水分補給を忘れずに行いましょう。入浴前に、コップ1杯程度の水を飲むのがおすすめです。
マラソン後の疲労回復におすすめのストレッチ
ランニングを継続するときには、疲労を溜めないことが大切です。そこで、ランニング後に行うと良い簡単なセルフマッサージをご紹介します。続けていくことで、疲れを軽減させるだけでなく、ずっとランニングを楽しめる体になりますよ。
- 足指・足首回しのストレッチ
- 脚の付け根のマッサージ
それぞれの方法を、詳しく見ていきましょう、
足指・足首回しのストレッチ
マラソン後の疲労回復には、足首回しのストレッチが効果的です。足首周りの筋肉や靭帯の柔軟性を保ち、足首の可動域を広げることで、足元の疲労と緊張を和らげるのに役立ちます。
【足首回しのストレッチ】
- 右足を左足の太ももの上に置きましょう。
- 足の指を1つ1つ前後に分けるように伸ばしていきます。
- 足の指を1つ1つ左右に広げていきます。
- 足の裏を握り拳で軽く叩きます。
- 右手で右足首をしっかりと固定し、左手の指を右足の指の間に深く差し込みます。
- 足首を、大きく円を描くように回します。
このストレッチも、ゆっくりと無理のない範囲で行うことが大切です。
脚の付け根のマッサージ
マラソン後の疲労回復には、足の付け根のマッサージも効果的です。特に股関節周りの筋肉は長時間のランニングで大きな負担を受けるため、マッサージによる疲労回復は大きな効果が期待できます。
【脚のリンパマッサージ】
- 膝を立てて仰向けに寝てください。
- ももの付け根の外側から内側へ向かって、指4本を使って押し込んでいきます。
- 1か所につき5秒ずつ、ゆっくりと力をかけていきましょう。
- 外側から内側へ、指4本で5回こすります。
- 足先から股関節に向かって脚全体を、5回ゆっくりとさすります。
脚の付け根のマッサージは、股関節周りの筋肉の緊張を和らげるとともに、血行を促進し、疲労物質の排出を助けることにつながります。お風呂から出たときや、体が温まっているときにぜひ行ってみてください。
マラソン後の疲労回復での注意点
マラソン後の疲労回復での注意点を紹介します。
走った後にすぐ座らない
マラソンを走り切った後、すぐに地面に座り込むのは避けましょう。急激に座る動作をするのは、激しいストレッチと同じで、筋肉のけいれんを引き起こす可能性があります。
もし、ゴールしたあとにすっかり疲れ果てたとしても、しばらく立っているか、ゆっくりと歩くことで筋肉のけいれんを防ぐことができます。息を整えられる程度になったら、水分やアミノ酸を補給し、軽いストレッチを行ってください。
まとめ
今回は、マラソン後の疲労回復法と足の健康を保つためのコツを、足の専門家が詳しく解説しました。身体に溜まった疲労感を解消するためには、適度なジョギングやウォーキング、筋肉をほぐすストレッチ、栄養バランスのとれた食事などをおすすめします。マラソン後の適切なリカバリーは、次のランニングをスムーズにはじめるためには欠かせません。ぜひこの記事を参考に、自分自身の体と向き合い、ゆっくりとケアしてみてください。
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記事監修
北澤 友子(きたざわ ともこ)
理学療法士
保健学修士
シックネイルケアセラピスト
新潟医療福祉大学大学院修了後、同大学の非常勤講師を担当しながら、リハビリの臨床現場をメインに活躍中。足・靴下・歩行に関する研究を学会にて多数発表。介護予防・健康増進など自治体の健康事業にも携わる。
【学術論文、研究発表】
前足部内外面に滑り止めを有した靴下が歩行時のクリアランスに及ぼす影響,"北澤 友子(新潟医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科), 阿部 薫, 伊藤 菜記",靴の医学(0915-5015)31巻1号 Page83(2017.08),会議録
転倒防止と屋内移動効率の向上を目指した滑り止め構造を有する靴下の開発,"北澤 友子(らぽーる新潟ゆきよしクリニック), 阿部 薫, 笹本 嘉朝, 後藤 可奈子, 中林 功一, 中林 知宏, 亀山 貴司",The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(1881-3526)JARM2016 Page I397(2016.06),会議録
ほか
著者: 株式会社 山忠