変形性膝関節症になったときの足底板や靴選びは?足の専門家が解説
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、膝の関節部分の軟骨がすり減ってしまう関節疾患です。骨同士が直接ぶつかることで痛みや腫れなどの症状を引き起こすことも少なくありません。そのため、歩くたびに痛みを感じ、日常生活が辛くなってしまうこともあるでしょう。
そこで本記事では、足の専門家が変形性膝関節症になったときの足元のサポートウェア、足底板(インソール)や靴選びについて詳しく解説します。膝への負担を減らし、歩くときの痛みを軽減させたいと思っている方はぜひご一読ください。
変形性膝関節症とは?足底板を検討するための基礎知識
そもそも、変形性膝関節症とはどのような病気なのでしょうか。足底板を検討するために、ここでは変形性膝関節症の以下の項目について、基礎知識を押さえていきましょう。
- 変形性膝関節症とは
- 変形性膝関節症の症状
- 変形性膝関節症の原因
それぞれについて、詳しく解説していきます。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、太ももの骨(大腿骨)と脛の骨(脛骨)をつなぐ膝関節の軟骨が、摩耗して膝の痛みを引き起こす関節疾患の1つです。膝関節の軟骨は、骨と骨が擦れ合うのを防ぐクッションの役割を果たしています。
しかし、軟骨が擦り減ってしまうと膝関節の動きが制限され、膝に痛みを感じるようになります。症状が進行すると、膝の形状が変化することもあり、これが「変形性」という名前の由来です。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症が進行すると、立ち上がる・歩く・階段の上り下りなどの普段の行動が、難しく感じることがあります。特に、関節を動かすときに痛みを覚える人が多いと言われています。
炎症が起こると、膝の周囲が腫れることもあるでしょう。変形性膝関節症かなと思ったら、自己判断せず、整形外科などの専門の医療機関に相談することをおすすめします。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の根本的な原因は膝の軟骨の摩耗にありますが、軟骨が擦り減ってしまう原因は、人それぞれ異なります。
よくある原因の1つが、加齢です。膝関節の軟骨は、時間が経つにつれて弾力性が弱まり、再生が難しくなっていきます。特に、日常生活の中で膝をよく使っていると、軟骨は次第に摩耗し、最終的には動かす度に痛みが生じるようになります。
また、体重増加も変形性膝関節症の要因の1つです。体重が増えると膝関節にかかる負荷が大きくなるため、軟骨が摩耗しやすい状態にあると言えます。
さらに、筋力低下も変形性膝関節症の原因の1つと言えます。太ももの内側の筋力が低下することによって体重が外側にかかりO脚になることがあります。すると、膝の内側に負荷がかかって変形性膝関節症を起こす場合があります。
変形性膝関節症の足底板とフットウェア選びのポイント
変形性膝関節症の痛みを和らげるには、フットウェア選びにもこだわることをおすすめします。足元の環境を整えて、膝や腰をサポートしていきましょう。フットウェアの代表的なものには、以下の3つがあります。
- 足底板(インソール)
- シューズ
- 靴下
ここでは、それぞれのポイントを解説していきます。
足底板(インソール)
変形性膝関節症になったときには、足底板を使うのもおすすめです。足底板とは、靴の中に敷いて使う中敷きのことで、体全体のバランスを足元から安定させる効果が見込めます。
また、O脚で膝の内側に痛みがある場合、外側に傾斜を付けた足底板を使用することで、痛みの軽減を図ることができます。
近年では、スポーツパフォーマンスの向上のための方法としても注目を集めており、痛みの緩和だけでなく、つまずく・転ぶといったバランスを崩すことでの怪我の防止効果も期待できます。
また、人によって大きさ・形・足幅が異なるため、あなたの足にあった足底板を見つけることが大切です。必要に応じて、オーダーメイドの足底板を検討しましょう。整形外科を受診している場合は、整形外科を通して義肢装具士に製作してもらうことも可能です。
シューズ
変形性膝関節症になったときには、シューズ選びにもこだわりましょう。自分の足にあったシューズに履き替えるだけでも、歩行がずいぶんと楽になります。どのようなシューズを選ぶと良いかを具体的に見ていきましょう。
良いシューズと悪いシューズの例を下表にまとめました。
【良いシューズの例】
- 足裏の接地面積が広い
- 甲部分を紐やベルトで固定できる
- 底が厚く、しっかりとしている
- クッション性があり踏み返しがしやすい
- かかとの芯がしっかりして、つぶれにくい
【悪いシューズの例】
- かかとが高く、安定しない
- サイズが足にあっていない
- 靴底か硬く、踏み返しがしずらい
- かかとの芯がやわらかく、つぶれやすい(足部が安定しずらい)
軽いシューズは一見、魅力的に思えますが、衝撃吸収素材がついていないことが多いため安定性を考慮するとあまりおすすめできません。底が硬く踏み返しがしずらいシューズは地面からの衝撃を緩和できず、足や膝、腰に負担がかかってしまう恐れがあります。
また、ハイヒールなどかかとが高い靴は、歩くときに不安定になりやすいため、なるべく避けて、おしゃれを楽しむときだけ履きましょう。
靴下
変形性膝関節症では、足底板や靴選びだけでなく、足にあった靴下を履くことも重要です。 健康的な足の状態では、5つの指が地面にしっかりと接して、体の重心を安定させています。
現代では、足指が床につかず浮いてしまっている状態の人も少なくありません。そんなときに役立つのが、5本指ソックスです。5本指ソックスは、1本1本の足指が袋に包まれているため動かしやすく、足指をスムーズに動かせます。
また、5本指ソックスの中でも、足のアーチをサポートする機能がある靴下を選ぶと、足指をしっかり動かせることで足のアーチ機能が働き、歩行時の衝撃を吸収して膝への負担を軽減できます。機能的な靴下は、単純に足を保護するための衣類としてではなく、足の健康を支える「フットヘルスウェア」として捉え直すことができます。
足にあった足底板や靴にこだわるように、毎日履く靴下も、ぜひ改めて見直してみてください。
変形性膝関節症で足底板を使って歩くときのポイント
変形性膝関節症の予防策として、正しい歩行法が非常に重要です。正しい歩行を身につけることで関節に掛かる負荷が緩和され、痛みが和らぐ効果が見込めます。普段から、ご自身の歩き方や体の姿勢をチェックしてみてください。
正しい歩行では、「かかと→足裏の外側→親指の付け根」の順に重心が移っていきます(あおり歩行)。まず最初に、かかとが地面に接触し、踏み出すときには自然に地面を蹴るイメージで一歩進んでみてください。
足裏がきちんと地面に接することで、衝撃が均等に分散され、膝にかかる負担が軽減されます。さらに、歩き方を改善することで、足の筋力アップにもつながり、転びにくくなる効果も期待できます。
正しい歩行は、意識して行わないと定着しづらいものです。普段から意識しましょう。
変形性膝関節症の改善に足底板以外で取り入れたい日常習慣
変形性膝関節症で膝が痛いときには、日常習慣でも改善する方法があります。足底板の使用とともに、下記の4つも意識してみてください。
- 膝に負担をかけない動作を心がける
- 体重増加に気をつける
- 膝を冷やさないようにする
- 適度に運動する
それぞれについて、詳しく解説していきます。
膝に負担をかけない動作を心がける
変形性膝関節症の症状を改善するには、膝に負担をかけない動作を心がけることが大切です。「立つ」や「歩く」など、日頃から行う動作でも、きれいな姿勢を保つことで膝への荷重が分散され、膝にかかる負荷を軽減する効果が期待できます。
特に、日本の伝統的な生活様式を続けている方で膝に痛みがある場合は、西洋式のスタイルへと変えてみてはいかがでしょうか。床で過ごす、床に敷いた布団で眠る、和式トイレを使うといった日本式の生活慣習は、膝を大きく曲げる動作を伴うため、膝への負担が増してしまいます。
椅子に座る、ベッドに寝る、洋式トイレに座るといった西洋式の生活スタイルのほうが、膝を深く曲げる必要がないため、膝への負担は軽減されます。
体重増加に気をつける
変形性膝関節症の症状を改善するには、体重増加に気をつけることも大切です。体重が増加すると、歩くときや階段を上り下りするときに大きな負荷が膝にかかってしまいます。
健康的な食事と運動を続けることで体重を管理し、膝への負担を軽減できます。また、体重管理は膝の健康だけでなくご自身の健康を維持することにもつながります。バランスの取れた食事と適度な運動を、毎日の生活の中にぜひ取り入れてみてください。
膝を冷やさないようにする
膝を冷やさないようにすることも、変形性膝関節症の症状を改善するには大切です。膝が冷えると血の巡りが悪くなり、筋肉が硬くなり、痛みが増加する可能性があります。
特に秋冬の肌寒い時期には、室内では暖房をつけ、外出時には膝を露出しないような服装を選びましょう。また、保温性の高いサポーターやレッグウォーマーを着用したり、毎日、湯船に浸かったりするのもおすすめです。
適度に運動する
変形性膝関節症の症状を改善するには適度に運動することも大切です。特にウォーキングなどの有酸素運動は、脳にも働きかけ、痛みを抑制する効果があるとも言われています。
ウォーキングを行うときは、膝に負担をかけないように、ウォーキング専用の靴を履くなどして、かかとから地面に着地するように心がけましょう。
ウォーキングは20~30分程度を目安とし、その日の痛みの状態に合わせて調節しましょう。
足が疲れたり膝に痛みを感じたら、無理をせずに休息をとるか、その日の運動をストップしてください。さらに、ウォーキングの中でも水中歩行は、水の浮力により膝にかかる負荷を軽減させながら運動が行えるのでおすすめです。
まとめ
本記事では、足の専門家が変形性膝関節症になったときの足底板や靴選びについて詳しく解説しました。自分の足にあった足底板(インソール)・靴・靴下を選べば、膝への負荷が軽減され、歩行時の痛みを軽くできる可能性があります。また、足元のケアには5本指ソックスの使用もおすすめです。足指をしっかり使うことで足のアーチ機能が働き、膝への負担を軽減する効果が見込めます。
ケアソクの〈ととのえる〉は、足のアーチをサポートし、足指が伸び広がり地面に接地することを促す5本指ソックスです。本記事で紹介したポイントとともに、5本指ソックスの着用も、ぜひ検討してみてください。
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記事監修

北澤 友子(きたざわ ともこ)
理学療法士
保健学修士
シックネイルケアセラピスト
新潟医療福祉大学大学院修了後、同大学の非常勤講師を担当しながら、リハビリの臨床現場をメインに活躍中。足・靴下・歩行に関する研究を学会にて多数発表。介護予防・健康増進など自治体の健康事業にも携わる。
【学術論文、研究発表】
前足部内外面に滑り止めを有した靴下が歩行時のクリアランスに及ぼす影響,"北澤 友子(新潟医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科), 阿部 薫, 伊藤 菜記",靴の医学(0915-5015)31巻1号 Page83(2017.08),会議録
転倒防止と屋内移動効率の向上を目指した滑り止め構造を有する靴下の開発,"北澤 友子(らぽーる新潟ゆきよしクリニック), 阿部 薫, 笹本 嘉朝, 後藤 可奈子, 中林 功一, 中林 知宏, 亀山 貴司",The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(1881-3526)JARM2016 Page I397(2016.06),会議録
ほか
著者: 株式会社 山忠
