妊娠中のこむらがえりの原因は?応急処置と予防方法を足の専門家が解説
妊娠したら足がつりやすくなったという妊婦さんは少なくありません。急に足がキューっとつって(こむらがえり)、動けなくなるのはとても辛いものです。
しかし、なぜ妊娠中にこむらがえりが起こりやすいのでしょうか?また、この辛い症状を予防する方法があれば、知っておきたいと思う妊婦さんは多いでしょう。
そこで本記事では、妊娠中のこむらがえりの原因と応急処置、予防するための効果的なストレッチ法を解説していきます。ぜひご覧ください。
妊娠中のこむらがえりの概要と応急処置
こむらがえりが起こったときにはどのようにすればいいのか、応急処置法を知っておくと安心です。ここでは、こむらがえりの基礎知識と応急処置について解説します。
こむらがえりとは?
こむらがえりとは、ふくらはぎを中心に足の指や土踏まずの筋肉が痙攣を起こすことを言います。こむらがえりの痛みは、通常、数秒から数分の間でおさまります。寝ているときや運動中に、突然起こることでもよく知られています。
こむらがえりの原因は完全には解明されていませんが、様々な要素が関与すると考えられています。一般的には、筋肉の緊張や疲労が溜まることで、筋肉の制御機能がうまく働かなくなることが一因と考えられています。
応急処置は?
こむらがえりが起こったときには、対処法として患部を伸ばすことが重要です。ふくらはぎがつったときには、体の力を抜いて楽な姿勢になり、つま先を上に向けて、ふくらはぎを伸ばしましょう。同時に、手でつま先を手前に引くのも効果的です。
ただし、妊娠後期にはお腹が大きくなり、つま先を掴むのが難しいこともあります。そんな時には、タオルを足裏にかけて伸ばしましょう。
もし寝ている間にこむらがえりが起きた場合は、横向きになって、つった足のつま先をゆっくりと引き上げます。焦らず、ゆっくりと伸ばすのがコツです。
また、ふくらはぎを伸ばした状態で、患部をマッサージするのもおすすめです。つった足の裏やふくらはぎを優しく揉んでみてください。足の筋肉の痙攣を和らげるのに役立ちます。
妊娠中にこむらがえりが起こる原因
妊娠中にこむらがえりが起こる原因には、以下の3つがあると考えられています。
- 足の筋肉に負担がかかる
- 下半身の血流が滞る
- ミネラルバランスが崩れる
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
足の筋肉に負担がかかる
妊娠中にこむらがえりが起こる原因の1つ目は、足の筋肉に負担がかかることです。妊娠によってお腹が大きくなり体重が増えることで、下半身にかかる荷重が増え、足の負担が大きくなっていきます。
そのため、妊娠中は足の筋肉が疲れやすい状態と言えます。また、妊娠中はホルモンの変化の影響で、筋肉の緊張やこむらがえりが起こりやすくなると考えられています。
下半身の血流が滞る
妊娠中にこむらがえりが起こる原因の2つ目は、下半身の血流が滞ることです。妊娠中は子宮が大きくなり、お腹周りの血管や静脈が圧迫されます。そのため、下半身が血行不良になりやすい状態です。特に、お腹が大きくなる妊娠後期は注意が必要です。
また、足やふくらはぎの筋肉に十分な酸素や栄養が届かなくなると、こむらがえりのリスクが高まります。そのため、妊娠中は普段と違う体の状態であることを意識し、適度な運動や足のケア、姿勢の改善をして血行を促すことが大切です。
とはいえ、妊娠中は体調が変わりやすいため、運動や食事については、主治医や助産師とよく相談しながら行ってください。
ミネラルバランスが崩れる
妊娠中にこむらがえりが起こる原因の3つ目は、ミネラルバランスが崩れることです。特にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルは、骨や筋肉の動きに重要な役割を果たすため、適切に摂取する必要があります。
また、妊娠中は栄養素の吸収状態が変わりやすく、ミネラルバランスが乱れてしまいがちです。ミネラルバランスが崩れると、筋肉の収縮と緩和に必要なカルシウムやマグネシウムの供給が不十分になり、こむらがえりが起こりやすくなってしまうのです。
妊娠中のこむらがえりを予防する4つのアクション
妊娠中のこむらがえりを予防するには、以下の4つの方法があります。
- 水分補給をする
- 足を冷やさない
- ミネラル不足を防ぐ
- ふくらはぎのストレッチをして血行を促す
それぞれの方法を、詳しく解説していきます。
水分補給をする
妊娠中のこむらがえりを予防するには、水分補給が大切です。妊娠中は体内の血液量が増え、赤ちゃんの成長や体の代謝に必要な栄養を供給するために、体内の水分が消費される量も増加します。そのため、水分不足になると血液の循環が悪くなり、足がつりやすくなってしまいます。
そのため、毎日適切な量の水を飲んで、体内の水分バランスを保ちましょう。ただし、医師と相談しながら適切な水分量を摂取していくことが重要です。
足を冷やさない
妊娠中のこむらがえりを予防するには、足を冷やさないようにしましょう。足が冷えると、血管が収縮して血流が悪くなります。足が冷えてしまうと筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、こむらがえりのリスクが高まります。
妊娠中は、寒い場所で長時間過ごしたり、冷たい床に座ったりするのは避けましょう。寒い季節や冷房の効いた部屋では、足元をあたためる工夫をすることが大切です。靴下や膝掛けを使ったり、湯船にゆっくりと浸かったりしてよく足を温めたりしましょう。
また、冷えに関するツボが集中している足首を積極的にあたためる「足首ウォーマー」は着脱が簡単で持ち歩きも手軽でおすすめです。
ミネラル不足を防ぐ
妊娠中のこむらがえりを予防するには、ミネラル不足を防ぐことが大切です。ミネラル不足が起こると、筋肉の収縮と弛緩に必要なカルシウムやマグネシウムが十分に供給されず、こむらがえりが発生するリスクが高まります。
そのため、妊娠中はバランスの取れた食事を目指し、特にミネラルを含む食品を積極的に摂りましょう。乳製品・豆類・ナッツ類・葉野菜などがミネラルを豊富に含む食品です。1日3食の中で、バランスよく取り入れましょう。
しかし、具体的な栄養摂取量に関しては個人差があるため、妊婦健診のときに主治医や助産師と相談して、適切な食事プランを立てていくのがおすすめです。
ふくらはぎのストレッチをして血行を促す
妊娠中のこむらがえりを予防するには、ふくらはぎのストレッチをして血行を促すことも重要です。ストレッチすることで足の筋肉の柔軟性を保ち、こむらがえりの発生を予防する効果が期待できます。
【ふくらはぎのストレッチ方法】
- 両足を肩幅程度に広げて、壁やテーブルに手をつきます。
- 片足を一歩後ろに引いて、もう一方の足の膝を曲げます。
- ゆっくりと後ろ足のかかとを床につけ、ふくらはぎを伸ばします。
- 20秒~30秒程度、その姿勢を保ちます。
ストレッチはお風呂上がりや就寝前などにおすすめです。就寝前のストレッチは、血行が促進され体温が上がるため、深い睡眠にもつながりますよ。
まとめ
妊娠中のこむらがえりは、体重増加による足への負荷増や、血液循環の変化、カルシウムやマグネシウムの不足が原因で起こると考えられています。こむらがえりの予防策としては、適度な運動やストレッチ、十分な水分とミネラルの補給が大切です。
また、こむら返りの原因になる冷えを予防するため、足をあたためる靴下を使ってみてはいかがでしょうか。ケアソク〈あたためる〉はセーター2着分の糸を使用し、高い保温力のある室内用の靴下です。ぜひ試してみてください。
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記事監修
北澤 友子(きたざわ ともこ)
理学療法士
保健学修士
シックネイルケアセラピスト
新潟医療福祉大学大学院修了後、同大学の非常勤講師を担当しながら、リハビリの臨床現場をメインに活躍中。足・靴下・歩行に関する研究を学会にて多数発表。介護予防・健康増進など自治体の健康事業にも携わる。
【学術論文、研究発表】
前足部内外面に滑り止めを有した靴下が歩行時のクリアランスに及ぼす影響,"北澤 友子(新潟医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科), 阿部 薫, 伊藤 菜記",靴の医学(0915-5015)31巻1号 Page83(2017.08),会議録
転倒防止と屋内移動効率の向上を目指した滑り止め構造を有する靴下の開発,"北澤 友子(らぽーる新潟ゆきよしクリニック), 阿部 薫, 笹本 嘉朝, 後藤 可奈子, 中林 功一, 中林 知宏, 亀山 貴司",The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(1881-3526)JARM2016 Page I397(2016.06),会議録
ほか
著者: 株式会社 山忠