オンラインショップ ケアソク(CARE:SOKU)

ケアソクの研究開発者たち

足から健康に」山忠がケアソクを開発した理由

2018年に創業60周年を迎える山忠。そして、この年に山忠の新たな1ページが幕を開けます。その挑戦をリードするのが、『ととのえる』『うるおす』『あたためる』からなるケアソクシリーズです。代表取締役会長・中林功一は「ケアソクで、世の中の人たちの健康を支えていきたい」と語ります。なぜ今、山忠はケアソクの開発に乗り出したのか。プロジェクトに込められた想いとは。

足のポテンシャルを引き出し、機能の改善をサポート

ケアソクシリーズの開発に込めた想いをお聞かせください。

本当に気持ちがいいので、とにかく履いてみてください! 本音を言うと、私の言いたいことってこれだけなんです。とにかく履き心地がいいから試してもらいたい。このメッセージさえ伝わればそれで十分。でも、それじゃさすがに伝わりませんよね(笑)。

なぜ気持ちがいいのかというと、ケアソクは足の可能性を引き出し、本来持っている機能の改善をサポートする靴下だからです。

例えば、私たちの足には「3つのアーチ」が備わっています。横方向のアーチと、内側・外側にある縦方向のアーチです。これらがクッションのような役割を果たし、歩行の際の衝撃を吸収する構造になっています。

ところが、靴を履いて過ごし、座っている時間も多い私たち現代人の足は、アーチ機能が十分に使われず、衰えてしまっているケースが少なくありません。その結果が扁平足(土踏まずがほとんどない足)や浮き指(5本の指がしっかり地面に着いていない状態)といった症状です。

また足には、本来であれば自分で湿度や温度を保つ機能が備わっているわけですが、加重の集中によって皮膚が角質化してしまったり、血液が滞って足先に温度が行き届かなかったりします。これがカサつきや冷えの原因につながっています。

ケアソクは、こういった機能をサポートすることを目的として開発された靴下です。足が本来持っている機能を十分に引き出してあげられる靴下こそが、履き心地も一番いい靴下になるのではないか──。これは足の“声”にじっくりと耳を傾けた結果わかったことなんです。

科学の力を借り、足の声に耳を傾ける

「足の声を聞く」というのは、具体的にどういうことでしょうか?

別にオカルト的な話をしたいわけじゃないですよ(笑)。声とはつまり「データ」や「エビデンス」のことですね。

少し話が回り道になりますが、山忠は創業以来、お客様の声に耳を傾けて靴下づくりに取り組んできました。山忠の原点は行商スタイルにあり、作った靴下をお客様のところへ持っていき、意見をもらって改善して……という作業を延々と繰り返しながら商品開発を進めてきました。

山忠を支える看板商品『足うら美人』(ケアソク『うるおす』シリーズの原型)も、元々は初代社長である父が、かかとのカサつきに悩む母のために作り始めたものでした。そうやって誰かの困りごとや、ときにはお客様のクレームをもヒントに様々な商品を開発してきたわけですが、一方であるときから、「これ以上先へ進むためには、足そのものについて勉強しなくては」という思いを抱くようにもなりました。

私たちは靴下を作る会社ですが、靴下の真の顧客は誰なのだろうかと考えたとき、それは「足」だと気づいたんです。ならば、足の仕組みや構造、足が全身に与える影響など、足のことをもっと知り、足が喜ぶような靴下づくりをしていく必要があるのではないかと思い至った。そこで頼ったのが「科学」の力でした。

なるほど。それが阿部薫先生や高山かおる先生とのコラボレーションにつながっていくわけですね。

そうですね。アクションとしては大きく分けて2つあって、

(1)靴下の効果を検証するためのデータ測定
(2)集めたデータを専門家とともに解析

といった取り組みを進めてきました。

まずデータ測定ですが、「足底圧計測機」という機械を導入しました。これは乗るだけで足底の圧(足裏にかかる体圧の分布)など、足にまつわる各種データが測定できるという優れものなので、これを様々な人に試してもらい、データを収集していきました。

そこで私たちは、足が感覚受容器官としてどれだけ繊細で緻密であるかを痛感することになります。裸足で測定したときと、靴下を履いた状態で測定したときでは、びっくりするほどデータが変化したんです。

例えば、『ととのえる』のサンプルを履いてもらうと、それまで足裏にかかりすぎていた体圧が分散していることを示すデータが出ました。さらに、使えていなかった5本の指がちゃんと地面に接地していることもわかり、「靴下でこんなにも変わるんだ!」って驚くと同時に、自分たちが作ってきたものはちゃんと理に適っていたんだという手応えも感じました。

しかし、データが変化することはわかったけれど、我々だけではそれらが意味するところを科学的に解析することはできません。その部分で力をお借りし、さらなる商品開発のためのパートナーとなってくれたのが、阿部先生や高山先生を始めとする専門家の方々です。私も社員とともに「足の研究会」を開催し、阿部先生の研究室にご協力を仰ぎながら、歩行運動のメカニズムや足底圧データの読み取り方などをレクチャーしていただいています。その具体的な取り組みに関しては、ぜひ先生方のインタビューをご覧いただければと思います。

『ととのえる』を履くと足の指がしっかりと開き、5本の指が接地しやすくなることがデータで実証されました。足裏全体で地面をとらえるから、重心バランスがととのった歩行が可能になります。

足は健康の土台。良くも悪くも全身に影響を及ぼす

山忠では、ケアソクシリーズを従来の靴下の概念を超えた「フットヘルスウェア」と位置づけています。これはどういうものなのでしょうか。

山忠には創業から培ってきた教訓を元にした「商品開発指針十ヶ条」というものがあり、その中のひとつに「靴下を媒体として健康を売る」とあります。足は健康の基本であり、そこを支えるのが靴下メーカーの使命だという考え方が昔からあった。それが専門家たちとの共同研究を重ねる中で、より具体的に見えてきました。

科学的な眼差しで眺めてみると、足の重要性をつくづく実感します。例えばひざに痛みを抱えている人は、かなりの確率で扁平足だったりするわけです。それは土踏まずのクッションがないため、吸収できなかった衝撃がひざへの負担につながっていくからです。また、足裏にかかる体圧が左右どちらかに偏っているような人の場合、そのアンバランスを解消しようと上半身にねじれが生じ、腰に負担が集中してしまうことが少なくない。このように、足の状態は全身と連動しています。まさに足は健康の土台なわけです。

そう思うと、靴下が担っている役割ってかなり重大ですよね。先に述べたように靴下ひとつでデータにかなりの変化が出るわけですが、それは裏を返せば、ダメな靴下を作ってしまうと健康に悪影響を及ぼしてしまうということも意味します。靴下づくりは責任の重い仕事です。

だから私たちは、専門家との共同研究を元にエビデンスを導き出し、科学的根拠に基づいた商品開発を始めました。足の“構造”に対するアプローチが『ととのえる』であり、足の“スキンケア”に対するアプローチが『うるおす』であり、足の“冷え”に対するアプローチが『あたためる』です。

“予防科学”の観点から社会の役に立つ靴下づくりを

それでフットヘルスウェア、阿部先生の言葉を借りると「靴下の形をした健康器具」となるわけですね。

そうですね。まあでも、確かに科学に基づく靴下づくりを進めてはいるんですが、私としては「とにかく気持ちいいから履いて欲しい!」ってことを伝えたいわけです(笑)。

足の機能が十分に発揮されると、本当に心地がいいんですよ。足指が地面をしっかりとらえる感覚、歩行時の衝撃をやわらかく吸収してくれる足裏のクッション、水分を逃さずスベスベに保たれたかかと、靴下を履くことで保たれる足先の温もり……。

どうですか? 想像するだけで気持ちいい感じがしませんか? 実際に私も、『ととのえる』を履き続けていたら、何十年もつぶれたままになっていた左足小指の爪が生えてきたんです。これには本当に驚きました。爪が生えなかったのは、「ちゃんと俺を活かせ!」という足からのメッセージだったのかもしれません(笑)。

さらに、『ととのえる』を履いたお客様が感動して電話までくださり……。整形外科に行っても治らなかったかかとの痛みがやわらいだというお話をうかがい、思わず開発スタッフと一緒に涙を流してしまいました。

日本は物質的に豊かな国になりましたが、その結果、人々のライフスタイルが変わり、足本来の持つ機能が退化してしまいました。足は私たちが健康に暮らすための土台であり、大げさに言えば、国の土台でもあると思っています。例えばこの先ますます進む高齢化を考えれば、家庭内事故の最も大きな原因である「転倒」を防ぐことは社会的な課題とも言えますよね。

病気やケガを未然に防ぐ“予防科学”の観点から、今後も人々の、そして社会の役に立つ靴下づくりを進めていきたいと思います。

※本文内の役職等は取材当時のものです

中林功一(なかばやしこういち)
株式会社山忠 代表取締役会長
青山学院大学経営学部を卒業後、経営コンサルティング会社勤務を経て家業である山忠へ入社。2005年に代表取締役社長に就任。先代から引き継いだ「靴下を通して健康を売る」という課題を達成するため、科学的なエビデンスに基づいた靴下づくりを展開。足の持つ可能性にわくわくが止まらず、会う人会う人に靴下の魅力を熱弁している。