オンラインショップ ケアソク(CARE:SOKU)

たのしく歩む、自分らしく生きるコツ

インタビュー「あしたの歩き方」

その足、みます!

人とはちょっと違った、その人らしい強みを生かしたユニークな視点で活躍されている方々の足に突撃!「足の分析」から始まりヘルスケアと生き方の哲学を尋ねる、ケアソクならではの取材企画です!

第一歩為末 大さんの歩き方

為末 大さんの足
話をする人
為末 大(ためすえだい)さん
男子400mハードルの日本記録保持者であり、2000年代にはシドニー・アテネ・北京と3大会連続でオリンピックに出場した経験も持つ。現在は執筆活動、身体に関わるプロジェクトを行う。YouTubeチャンネル「為末大学Tamesue Academy」では身体のメカニズムに関する理解を深めるための発信なども精力的に行っている。
ケアソク「あしたの歩き方」担当
話をきく人
ケアソク「あしたの歩き方」担当
株式会社山忠社員でケアソクの中の人。足のことならなんでも知りたい。
北澤友子先生
足をみる人
北澤友子先生
理学療法士。新潟医療福祉大学大学院修了。足・歩行・靴下に関する研究を学会にて多数発表。自治体の健康事業などにも携わり、地域社会の健康と福祉に寄与する活動を行っている。

偉人の足を徹底解剖!まずは足底圧分析コーナー!

為末 大さん 足底圧分析中
為末 大さん 足底圧分析結果PC画面
為末 大さん 足表
為末 大さん 足裏
為末 大さん 足底圧分析結果画像

足底圧(そくていあつ)分析とは?

足の裏がどのくらい床面に接しているか、どの部分に圧力が強くかかっているかを専用の機器にて測定。それにより、普段の足の使い方や負担のかかり方などを評価することができます。

分析結果為末さんはこんな足!

タコや浮き指から見えた、ハードル競技ならではの特徴とは?

北澤

為末さんのデータは、つま先側に荷重がかかっているのが特徴です。特に左足の親指に強く荷重がかかっており、実際その場所にしっかりタコができています。タコというのは摩擦や圧が繰り返される部分を保護するために皮膚を厚くしている状態です。為末さんがやられていたハードルという競技の性格上、着地や蹴りだしで一般の方より過度に親指を使った結果だと考えられます。
そして、両足とも親指以外の指は接地面積が少ない状態ですね。指が全部接地するのは、ヨガや剣道のような足指に力を入れて静的にバランスを保つスポーツをする人に多い印象です。ハードル競技は常に重心を移動させる動的な競技なので、指の使い方に特徴が出ているのかなと思います。

理想的な部分も!

北澤

一方で、土踏まず部分である内側縦(ないそくたて)アーチはすごくきれいに出ています。
全体的には左右のかかとにしっかり体重が乗っていて、足の裏への圧のかかり方もちゃんと分散しているので、バランスのいい歩き方ができている証拠だと思います。
足裏の画像一つでこれまでの為末さんの足の使い方が推測できるのはとても興味深いです。

為末 大さん
為末 大さん

「走る」より「歩く」が好き?

ケアソク

「走る人」というイメージの強い為末さんですが、普段から散歩などはされたりするのでしょうか?

為末

散歩はよくします。むしろランニングは全然しません。引退して10年以上走ってないかもしれない。僕が言うのもなんですが、やっぱり走るのってしんどいので(笑)。歩くのが好きで、家から駅までも徒歩だし、仕事の移動も2駅くらいなら歩いて行きます。いつもスマホで歩数を数えていて、一日平均15000歩くらいですかね。今日もすでに7000歩近く行っています。

僕は仕事柄、会議や打ち合わせが続く日が多いのですが、立て続けにオンラインミーティングをやっていると思考が働かなくなってくるんですよ。そういうときは、合間で散歩する時間があったほうが調子いい。だから一箇所で予定を詰め込むのではなく、件数を減らしてでも場所を分散し、移動で30分くらい歩いて考えをまとめてから次のミーティングに臨むというスタイルが自分には合っているように感じます。

あと、僕は大のコーヒー好きなのですが、A地点からB地点まで移動する際、時間に余裕があるときは地図で近隣のコーヒー屋さんを探してそこに行くというのを日課にしています。Googleカレンダーでスケジュールを管理しているので、その日の場所や移動ルートを確認し、コーヒー屋さんを検索するのが楽しいんですよね。例えば新橋だったら「あそこにサザコーヒーがあるな」とか、頭の中に大体マッピングされてて(笑)。コーヒーめぐりも散歩の醍醐味のひとつですね。

為末 大さん
ケアソク

「為末大学」などでは人間の身体について科学的な目線から解説されていますが、そんな為末さんは「足」をどのような存在として捉えていますか?

為末

僕のおばあちゃんは94歳まで長生きしましたが、歩けるうちは元気だったんですよ。歩けなくなってから弱ってしまって、つくづく歩けることは大事だなと。そういう経験もあって、足というのはQOL(quality of life)の根幹に関わるものだと考えるようになりました。

陸上をやっていたからか、「どうやったら肩コリが治りますか?」「どうやったら痩せられますか?」といった質問をよく受けるんですが、僕がいつも言うのは「何ごとも姿勢が大事」ということで。姿勢というのは足から頭のてっぺんを結んだ直線のことですが、そこをきれいにつなぐことが健康の土台だと思います。そして、身体と地面の接点が足の裏なんですよね。

アスリートの世界では「リラックスを知ろう」とよく言います。もちろんすべての力を抜いたら姿勢が崩れちゃうわけですが、例えば陸上のように立った状態で行う競技で言えば、リラックスとはつまり「立つために必要な最低限の力以外をすべて抜いた状態」という意味になります。そうやってリラックスした状態でバランスよく身体を支えられたらベストですが、それはそれでなかなか難しい。というのも、人間の身体は生きていく中で必ずどこかに“歪み”が出てきてしまうもので、それを補正するためにいろいろ余計な力が入ってしまう。それがコリや痛みにつながっていくわけです。

為末 大さん
為末 大さん
ケアソク

歪みというのは、具体的にどういうものなのでしょうか。

為末

先ほど僕の足底圧を計測していただいた際、「足幅は左のほうが広く、アーチも左のほうが高い」という結果もお話し頂きましたよね。それは多分、ハードルを飛んだ際に左足で着地するからだと思うんです。このように同じ動作を繰り返したり、なんらかの痛みをかばう動作をしたりする中で、身体のどこかに癖や偏りが生じる。ここで言う歪みとはそのようなものを指しています。

もちろん人間の身体は柔らかいからある程度の歪みは吸収してしまうわけですが、それでもやはり偏りは生じてしまう。スポーツ整形の先生なんかは「ヒストリー」という言葉を使うんですが、過去のケガとか手術の来歴を見ないとその人の姿勢は理解できないと言っている。「ああ、このときにアキレス腱をやってるのか」「だからそれをかばうためにかかと重心になってるんだな」という感じで推測していく。とりわけシニア世代の方と話していると、その人生が身体に表れているのがよくわかって興味深いんです。まさに足は身体の土台だなと実感します。

心と身体をつなげて考える

ケアソク

身体のメカニズムに対する興味のきっかけはなんだったのでしょうか?

為末

アスリートは身体をうまく使えることが結果につながるので、そこはずっと興味のある部分でした。陸上は「立って走る」というシンプルなもので、例えばサッカーやバスケのように「チーム戦術」みたいなものはそこまでないんですね。だから、より身体のほうに意識が向いていったというのはあると思います。

さらにおもしろいなって思うのは、立位で行うスポーツにはかなり共通点が多い。身体をよくよく観察してみると、「歩く」という動作をしているときって左右の揺さぶりの連続で前に進んでいるんですね。前後ではなく左右、つまり「右足に乗って、左足に乗って」という動作の繰り返しなわけですが、これは例えば野球でピッチャーが投げるときも、サッカー選手がボールを蹴るときも、基本的には同じ構造になっている。だから他の競技から学べることもたくさんあって。

為末 大さん
ケアソク

なるほど。歩くという基本的な動作にしても、それがどうなっているのか、改めて考えてみる機会ってあまりないですもんね……。

為末

話は少し飛びますが、割り箸をくわえた状態でおもしろいものを見ると2割増しくらいでおもしろく感じるという実験があるんですね。これは表情の筋肉を笑ったときと同じ状態にすると気持ちにも影響するという話なんですが、人間の感情って内側から出ているだけでなく、身体から気持ちが作られている部分もあるということです。だから「ラジオ体操をすると元気になる」というのもあながち嘘じゃなかったりする。

僕は人間の心と身体に興味があって、身体の側から考えてみるのも理解のひとつだなと思っています。心と身体は哲学者のデカルトによって分けられてしまって、別々のものとして考えられてきました。でも今の認知科学などではそれがつながっていることが明らかになってきている。これからAI時代になってますます重要なテーマになるのではないでしょうか。

為末 大さん

「ロックを外す」ために必要なこととは?

ケアソク

自分の身体を意識するためには、どんなことから始めてみるのがよいでしょうか。

為末

例えば、股関節や肩甲骨の動きをまったく阻害しない服を着て、靴も歩きやすいものを履いて、その状態で1週間くらい生活してみると、すごく身体が快適になると思うんです。というのも、我々は思った以上に狭い可動域で生活しているので、それを大きく動かしてみることは身体に意識が向くきっかけになると思います。あとは先ほども言った姿勢ですよね。姿勢をキレイに整えることができると、歩きやすいし、生活しやすいし、コリや痛みもやわらぐし……と、様々な身体的実感が得られるんじゃないかと思います。

スポーツには「こういう動きをできるようにする」という感じで、型を身につけたり、手本の形をなぞったりという考え方が根強く存在しています。ただ、その一方で「制限を取り払っていくと身体が自由に動く」という考え方もあって、僕はこれを「ロックを外す」という言い方で表現しているんですね。身体にロックがかかっているというのは、言わばずっと窮屈な靴を履いたまま生きている状態に等しい。それに慣れてしまうと足を自由に動かせることすら忘れ、狭い可動域が自分の人生だと思ってしまうわけです。ロックがかかっている最たるものが姿勢です。それを外して中心を取りにいく。姿勢がよくなるというのが一番手っ取り早い方法だと思います。

ケアソク

ケアソクも着用すると重心や骨盤を意識してもらえるようになると思うのですが、それだけでずいぶん身体の感覚が変化したりしますもんね。

為末

やや抽象的な話になりますが、「リアリティとは何か」って今後ますます重要なテーマになると思うんですね。AIがますます進化し、本物とフェイクの違いがわかりづらくなっていくと、触ったり食べたり寝たり、自分の身体に付随するリアリティが再び注目されていくのではないか。

これだけAIやテクノロジーが進化しても、例えば「痛い」という感覚って全然解明されてないんですよ。「苦しい」とか「おいしい」とか「心地良い」とか、人生の幸福の大部分って身体に関わる領域のことだったりしますよね。それらは数万年前から何も変わってなくて、未開拓の部分だらけ。だから身体の問題を開拓するのってすごくおもしろい。

姿勢矯正の服とかも試したことあるんですが、脱いだら姿勢がすぐ元に戻っちゃうし、着用した状態に慣れちゃったりもする。テクノロジーを使っても身体ってなかなかうまくハックできないんですよ。だから「こうやって動くんだ」「こういう感覚なんだ」って、自分自身を知って、自分で感覚を身につけていくことが重要だと考えています。

為末 大さん
為末 大さん

最後はまさかの逆質問!

ケアソク

自己理解を深めるために大事にされているのが「言語化」という営みだと思います。為末さんが言葉にこだわるようになったきっかけはなんだったのでしょうか。

為末

実は小学生のとき、陸上部ともうひとつ読書部にも所属してまして(笑)。元から言葉が好きだったんでしょうね。例えば走るときの身体感覚を表現するとき、地面を「踏む」とか「押す」とか「触る」などの言い方があったりします。具体的には地面に対する足のつき方とか体重の乗せ具合によって変えているんだと思いますが、身体感覚に照らし合わせて「押すよりも踏むに近いかな」と表現を選択している。

よくお医者さんが子どもに「お腹がしくしく痛いの?」「それともじんじん痛いの?」みたいなことを聞くじゃないですか。あれってつまり内部感覚を言語化しているわけですよね。サラサラなのか、ザラザラなのか。感じたことを、自分の中にあるザラザラした経験と結びつけて言語化していく。そうすることによって言葉の豊かな使いまわしができるようになるし、こちらの感覚を相手に想起してもらえる言葉を選択できるようになるんじゃないかなって。

ちなみに履いたときから気になっていたんですが、ケアソクってどうやって編んでいるんですか? 指先がきれいに収まる感じがしたんですが、足の中指と薬指をうまく誘導するのってかなり難しいんじゃないかって思いました。あと、かかとの構造は高さとクッション性と出すためだと思うのですが、どういうプロセスを経てあのようになったのかも気になります。

ケアソク

まさか逆質問をいただくとは思いませんでした(笑)。まずは指の部分ですが、5本指ソックスだと指がそれぞれ独立して入るので、例えば曲がった指だと形がそのままになってしまいます。でもケアソクは内部に仕切りがある構造で、指のほうを合わせていく形になる。そうすると指がより伸び、浮き指などの人に指を接地させる効果があるんです。

それとかかとのクッションですが、最初は衝撃を吸収するために設けたものでした。ところが実際に着用してもらうと、かかとに体重がかかる「後方重心」が改善したり、指が使えるようになったり、巻き爪が治ったりと、様々な効果が報告されたんです。さらに足の計測イベントをやると、前重心の人も真ん中に戻るし、後ろ重心の人も真ん中に戻るしということで、指にもかかとにも効果があることが判明しました。

機械の技術力が上がって複雑な構造でも編めるようになったこともあり、最終的に今の形になっていったという感じです。もっとも、普通の靴下であれば5分で編めるところを、ケアソクは70分もかかってしまうという……。針を何度も行ったり来たりさせながら少しずつ編んでいく常識外れの靴下だと思っていただけたらうれしいです。

為末 大さん
為末 大さん
為末

70分もかかっているとは驚きでした(笑)。でも、私たちの足に元から備わってる機能をサポートするというコンセプトはおもしろいなと思いました。というのも、私たちはなぜ靴を履くのか、自然に適応してきたんだから裸足が一番いいんじゃないかという問いがあるじゃないですか。そう考えると、確かにそんな気もしてくる。子どもの遊びだって、遊具じゃなくて自然のほうがいいかもしれない。

でも、これは近代以降の変化だと思いますが、大昔であればやらなかったような「くり返しの動作」をするようになった。例えば「字を書く」にしても、椅子に座ってそれをくり返すわけですよね。それ自体は不自然な動作かもしれませんが、すでに私たちの暮らしに組み込まれているものでもある。それによって生じた歪みを補正することで、私たちは初めて自然な状態に近づけるのではないか。

でも、補正しすぎると「型にハメる」という感じになってしまい、窮屈になって身体にロックがかかってしまう。どのくらい補正し、どのくらい自由を持たせるか。そのバランスをどう取っていくかが、近代における「自然状態とは何か」という問題なんだと思います。

ケアソクもそうですよね。指をうまく使えるように補正するわけですが、それをやりすぎてしまうと、今度は自分で指を使っているのか、靴下に指を使わされているのかがわからなくなる。その「主体性を奪わない程度の加減」が大事なんでしょうね。指やアーチといった足の機能を上手に使い、重心を安定させることで骨盤を立たせ、それがキレイな姿勢を支えていく。健康の土台としての足を考えることは、よりよい人生を考えることにつながっていくと思います。

足の役割やメカニズムなど、為末さんのお話からは「歩くこと」や「立つこと」にまつわる多くの学びをいただきました。足に意識を向けてみることは、人生を豊かにしていくきっかけになるかもしれませんね。このインタビュー企画はまだまだ続きます。次回の歩く人も、お楽しみに!(取材日:2023年4月7日)


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